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『ゲド戦記』感想や小ネタまとめ・14年ぶりの鑑賞は・・感動でした!

ゲド戦記のアレンと龍のテルー

2006年の公開時より、14年ぶりにゲド戦記を観ました。
当時見た時はそこまで印象に残らなかったのですが、数年前に
”ゲド戦記がジブリ作品の中でいちばん好き!”
と言う友人がおり、いつかまた観たいなと思っていたところリバイバル上映が決定。

お客さんが多かったらやめよう・・
と思っていましたが、上映開始の数分前まで座席が全部選べた(!)のでかなり久々、映画館での鑑賞を決行しました。
(私含めお客さん3人でした)

今回はゲド戦記の感想や小ネタを書いていきます。
原作は未読。
一部ネタバレがありますのでご注意ください。

ジブリのリバイバル上映のラインナップに『ゲド戦記』が選ばれた理由は・・

映画館のスクリーンのイラスト


新型コロナの影響で実現することとなったジブリ作品のリバイバル上映。
感染を考えたらちょっと戸惑うところもありますが、ジブリ好きにとっては嬉しいですよね。
今回リバイバル上映に選ばれたのは『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』そして『ゲド戦記』。

リバイバル上映にゲド戦記が選ばれた理由は・・
おそらくですが、ほんのちょっとだけ疫病や感染症というワードが出てくるからなのかな、と。

ただしゲド戦記の中では
”疫病や感染症は世界の均衡を整えるためにある”
とされているうえ、
”自然の営みや流れを人間が壊している”
そんな感じのセリフまであって・・なかなか今の時期には危うい表現だな~なんて思いながら観ていました。

ゲド戦記は感染症や疫病の話ではない


疫病など言葉は出てきますが、ゲド戦記で描かれるのは病気の話ではありません。

ゲド戦記は作物が枯れ、動物が死に、魔法使いの力が弱り、人間の頭も心もおかしくなった状態・・・均衡が乱れてしまった世界が舞台となっています。
これはなんらかの理由で人間と住む世界を違えたはずの竜が人間の前に現れたことが原因とされています。

疫病や感染症が”世界の均衡を保つため”なら、ゲド戦記の世界の乱れは”世界の均衡が崩されている”状態と表現されていました。

映画・ゲド戦記は説明不足?


ゲド戦記の原作はアーシュラ・K・ル=グウィン著の全6巻のファンタジー小説であり、このアニメ映画では全シリーズの中から一部の話を切り取り作られています。
シリーズ三作目の『さいはての島へ』をもとに、ゲド戦記とは別の物語・宮崎駿さんの作品『シュナの旅』も原案とされています。

この時点でふたつの物語がミックスされているわけですが、さらに映画オリジナルエピソードまで加わる・・
そんないろいろな要素が混ざった作品です。

そもそもが複雑な物語なんですよね。
観終わった後にはいろいろと謎は残るため、説明不足だと感じる人がいるのもよく分かります。

ただ揚げ足をとるわけではありませんが、名作であるナウシカも物語の一部を切り取っているため、全てが納得・解決!という作品ではありませんよね。
全体のまとめ方で言えばゲド戦記も同じような感覚でしょうか。

”きれいにキッチリまとめられたストーリーを観たい!”
そんな人には不向きな作品でしょう。

父親を殺すというオリジナルのエピソード

冒頭の父親を刺し殺すエピソードは映画オリジナルのエピソード。
かなり大胆な内容を追加していますよね。

”父・宮崎駿監督との関係のメタファー”だとか、”主人公アレンの葛藤は宮崎吾朗監督の葛藤??”

・・・なんて言われたようですが宮崎吾朗監督はこれを否定しているようです。

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ジブリ唯一”言葉で魅せる”作品


ジブリ作品、特に宮崎駿監督作品は社会風刺的なメッセージを暗に練り込んでいることが多いんですよね。
環境問題とか、人間のあり方など豚を使ったりして表現されています。

ただアニメーションの良さをフル活用していてエンタメ性がとても高いので、そんなの気にしなくても・気づかなくても楽しめるんですよね。

ゲド戦記は伝えたいことのアプローチの仕方がとっても分かりやすい。
死生に対してのメッセージが言葉でストレートに表現されている作品で、名言があまりないジブリ作品としては異例、心に響く言葉が頻出します。

”バルス”とかストーリーありきの名言・フレーズではなく、ここまで言葉そのもので魅せるのはこのゲド戦記だけでしょう。
これが刺さるがどうかで評価が割れる作品かと思います。

↓ゲド戦記の名言をひとつだけ紹介。

ハイタカ『自分がいつか死ぬことを知ってるということは、我々が天から授かった素晴らしい贈り物なのだよ

儂らが持っているものは、いずれ失わなければならないものばかりだ
苦しみの種であり、宝物であり、天からの慈悲である』


ストーリーを追うことに重きを置くよりも言葉や歌を”感じる作品”ですね。

ゲド戦記はこわいのか?


ゲド戦記はこわい、との声を耳にしますが・・私は気になりませんでした。
こわいところと言ったらアレンの悪夢のシーンと、クモが死ぬシーンあたりかな。
確かに幼児は怖がるでしょうね。

終始シリアスな雰囲気で、主人公はほとんど陰鬱としているし、ジブリの中では小さい子供向けの作品ではありませんね。

売られて首に錠をつけられたアレン


ちなみに・・
私は上映前の映画の予告の方が怖かったよ・・
『事故物件 恐い間取り』
予告の時は広い映画館の中に私しかいなかったんですよ。

暗い中でホラー映画の予告やめて~~(笑)

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声優陣がとても良かった


ゲド戦記の声優さん・・かなり好きです。
特にハイタカ役の菅原文太さん、クモ役の田中裕子さん、ウサギ役の香川照之さんがドハマりしてましたね。

ハイタカかっこいい~渋い!
荒波を超えて経験を積んで得る、優しさ強さを感じました。
これは若者にはなかなかできない演技ですよね~

ゲド戦記のハイタカ

ゲド戦記は酷評が多いらしいけど・・


ゲド戦記が公開された2006年頃は、宮崎駿監督全盛期~”引退か!?”という声も耳にするようになる頃・・
つまり宮崎駿監督が”伝説”になりつつある頃でした。

ゲド戦記はそんな宮崎駿監督の実の息子の初監督作品ということで世界中から注目されている中での上映でした。

確かにあの時期にジブリ作品と思ってみていたら、”ハイタカ”と聞いたらアシタカが浮かぶし、”まことの名前”と聞いたら千と千尋が頭をよぎる・・
それ以前のジブリ作品のように完璧すぎる完成度を期待してしまうと、どうしても、う~ん・・となりがちなのも分かります。

さらに原作とは違うところも多く、原作ファンからはあまり票を得られなかったことも酷評を浴びる原因のひとつだったのでしょう。


個人的には、と言うと・・

前述したような名言も心に響いたし登場人物にも共感できたし、また観たいと思える作品でした。
14年前の初見では作画の物足りなさは感じたのですが、今回の再鑑賞では気になりませんでした。
クモの最後のシーンは昔は手抜きと感じてしまったけど、今回見たらあのくらいが恐怖やおどろおどろしさを表現するのにはちょうどいいな、と。

竜が空を舞う映像なんて今では普通になっちゃいましたが、迫力があったしかっこよかった。
街の雰囲気など世界観も好きでした。

ゲド戦記の街並み

あとやっぱり挿入歌ですね。
テルーの唄はみどころです!

ゲド戦記は”ジブリ作品の型”にはハマらない、先入観なしで観てほしい!
そんな作品ですね。
私は原作を読んでみます。

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