有頂天家族で森見登美彦さんの作品にハマって以降、その他の森見作品を次から次へと読破していきました。
だいぶ昔に読んだものもほぼ忘れていたので初めてのような感覚で楽しめました。
先日、『熱帯』を読み終えついに森見作品コンプリート!
いやーー最後にすごいの来ました・・!
ということで今回は森見登美彦さんの『熱帯』の感想などを書いていきます。
森見登美彦『熱帯』あらすじ
『熱帯』という一冊の本。
それは今までに”誰も読み終えたことがない”本だった・・
この熱帯という作品には謎の本、『熱帯』が登場します。
『熱帯』は半分ほど読みかけたところでなぜか消失してしまい、誰も結末を知らない、誰も最後まで読んだことがないという不思議な本。
その本の謎をめぐり、『熱帯』の魅力に憑りつかれた人たちにより語られる冒険譚です。
熱帯は2018年に文藝春愁から出版された作品。
2019年の本屋大賞4位・高校生直木賞大賞を受賞していぞ!
森見登美彦『熱帯』感想
核心には触れませんが多少のネタバレはありますのでご注意ください。
前半のおもしろさは相当なもの!

お話の中の人物が別のお話を語り展開していく、という入り子構造で成り立つこの作品。
森見さん的にいうと”小説のマトリョーシカ”ですね。
森見さんの作品の中ではシリアス系に属し、小難しい言葉や四字熟語・人物の思考的文章は控えめ。
読みやすい文体です。
最初の登場人物は小説家・森見登美彦氏。
まるで森見さん本人の日常を除いているような、”締め切り嫌い”な小説家の日常が描かれます。
そこから出会っていく人物が熱帯という謎の本について語っていくんですが、これが不思議で興味深くかなりおもしろい!
『きつねのはなし』のようなホラーっぽさもちょっと感じつつ、『夜光』のようなミステリー要素もあり、登場人物たちもいい感じにあやしい・・
ワクワクしながら次から次へと読み進められます。
複雑に思われがちな入り子構造ですが、登場人物はそこまで多くはなく、人物の関係を頭の中で整理しつつ読んでいくのはなかなか楽しかった。
また、小説好きな登場人物がロビンソンクルーソーのお話に没頭してしまう、とか、小説を読む喜びが語られたりと”小説愛”をいたるところに感じられる前半でした。
そもそも”謎の本の魅力に憑りつかれる”とか”誰も結末を知らない本”とか、本好きにはたまらないポイントなんじゃないだろうか。
核の部分が・・・アレ!?
かなりいいペースで読み進め、いよいよ物語の核心、南の島で佐山と出会った続きのパートが来た!
と興味津々で読んでいくと・・・・
ん?
んん・・!?
急に別の本になったような、、
いくら繰り返しても目が滑ってしまうというか、、
文章が味気ないというか、、
まあ”ありていに言えばつまらない”・・。
森見さん作品を全て読んできて初めてのこと。
こんなことが起こるなんて、衝撃。
それでも、この作品は入り子だ!
次の小さいマトリョーシカになれば変わるさ!
・・と思いつつ読んでいくんですが、なかなか次のお話に変わらない。
結局この階層は本全体の三分の二くらいを占めていました。
ハマれない活字で眠くなってしまう私はこのパートはふうふう言いながら読みました。
(ちなみにですが、筆者はいつも自分のブログを読み返してふうふうしてます・笑)
それでも持ち直す!素晴らしい読後感!
それでも最後は盛り返します。
森見さんはどちらかというと、アッと驚くどんでん返しとかそういったテクニックが魅力というタイプの作家さんではないと思うので、この熱帯もある程度最後の展開が予想できるんですが、それでもラストはいいですね~
これは”怪作”と言われるのもうなずけます。
これは一大物語を読んだぞ・・!
最後まで読んでみれば、あの中盤あってこその読後感でした。
全部読んでよかった・・
子どもの頃、読書感想文や作文が大嫌いだった筆者がここで一念発起して感想記事を書くくらいの魅力がある作品であることは間違いないでしょう。
森見さんが病気がちだった!?噂あり
『熱帯』は森見さんにとって執筆が困難であり、もう二度とこういった小説は書きません、と公言されている作品です。
↑こちらのAmazonのレビューによると、”連載を抱え過ぎた森見さんが心身症を発症した”と書かれています。
ただしいくら検索してみても森見さんの心身症・病気に関する情報は出てこず・・
実際に熱帯がWEBで連載が開始されたのは2010年で、森見さんが2011年には全ての連載をストップしたことは事実です。
熱帯に関しては完成まで8年かかっています。
森見さんの病気に関しての確かな情報はありませんが、悩ましい時期があったことは確かなようです。
いつの時代も、文豪というのは悩ましい人が多いものですね。
1ファンとしては森見さんには心身ともにご自愛いただきたい!
という気持ちがいちばんにあります。
そしてもし新作がでたら
『ラッキー!嬉しい!ありがとうございます!』
と感謝しながら読みたいもんだな、と思いました。
『熱帯』は小説愛溢れる森見さん版『千一夜物語』

熱帯はかの有名な『千一夜物語』をモチーフに綴られる『森見さん版現代の千一夜物語』です。
他の森見さん作品と違い、誰にでも”これいいよ!”とすすめるタイプの作品ではありませんが、本や小説が好きな方にならぜひともおすすめしたい作品です。
複数の話が余韻を残しつつ次々に展開される不思議感覚を、いたるところに溢れる小説愛を、最終的にマトリョーシカはどんな形になっているのかを・・
ぜひご体験&ご確認ください!
この世はシャハラザードの語るお話の中・・?
千一夜物語も読んでみたくなりました。