キューブリック作品を観よう3作品めは超名作『時計じかけのオレンジ』。
巨匠キューブリック監督の作品の中でも1・2を争うメジャーな作品。
今回10代の頃以来、20年ぶりくらいに観たけど・・
ん~・・見事に前回とは違う感想を持ちました!
時計仕掛けのオレンジ・基本情報
1971/イギリス・アメリカ 137分
原作/アンソニー・バージェス
『博士の異常な愛情』『2001年宇宙の旅』と並び”キューブリックSF3部作”の一つ。
翻訳おかしいだろ、と思ったら・・
約20年ぶりの鑑賞ということで、ほぼ忘れたまっさらな状態で観ました。
本気で忘れていたので見はじめ、
『何言ってんの?字幕・・日本語訳おかしくない?』
という事態に・・(笑)
これは語り部である主人公のアレックスが”ナッドサッド言葉”というロシア語と英語のスラング(原作者のアンソニー・バージェスが作った言語)を多用するために起こる現象ですね。
知らずに見た人はみんなそう思うんじゃないかな・・?
ナッドサッド言葉はロシア語に影響を受けた英語、というスタンスで、スラングとされるような汚い言葉メインに使われます。
最初はまあ何がなんだかって感じなんですけど、見ているうちに雰囲気で理解できてくるという不思議さがあります。
また、汚い言葉の部分を見事にナッドサッド言葉で隠しているような、隠語的なイメージもあってそれがこの作品の独特の雰囲気・世界観をつくり出すのに一役買っていますよね。
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何が衝撃って主人公が15歳ってこと
この主人公のアレックス、なんと15歳の設定なんですよ。
年齢に不似合いのファッションをしているママが朝、アレックスを起こすシーンで『学校に遅れるわよ』と・・。
私『え?学生なの?大学生・・?』
と思っていたらまさかの15歳。
(何歳でもダメですが)15歳の少年が夜な夜なこん棒振り回してドラッグ入りのミルク飲んで強盗&強姦してるって・・そりゃ問題作だわ!(笑)
ん・・?となるとアレックス出所後にかつての仲間が警察官になっていたってのは・・
警察ってそんなに若くてなれるもの?
と思い調べましたが、日本でも警官になれるのは高卒~で最年少は18歳だそうで。
15歳で高1・・アレックスの刑期は2年だったので高校卒業後に警察に就職したってことか。
イギリスでもきっとなれるんでしょう、18歳も警官に。
・・にしてもあんな警官嫌だわ!(笑)
おそらくですが、キューブリック監督的にはそこまで主人公たちを低年齢に見せるつもりはなかったのかな?なんて思いました。
主演のマルコム・マクダウェルはこのアレックス役を演じたのは28歳の時ですからね。
実際どう見ても15歳には見えないしね。
50年の時を超えても妖しい魅力に満ちている

見てください、このつけまつげを片目だけ上下につけるという奇抜なファッション。そして三白眼。
仲間たちもみんな変なメイクしてましたよね。
天狗みたいな仮面付けたり。
部屋とかお店のインテリアも奇抜。


公開から50年近く経った今現在でも、この奇妙で奇抜で妖艶な世界は確かに人を惹きつけるものがあります。

現在もファッション業界などへ影響を与え続けているんですね~。
同じイギリスの非行少年(青年?)を描いた『トレインスポッティング』はスピーディーでメッセージ性が強く、ガツンとストーリーがあって最後は爽快!
・・みたいな印象ですが、こちらはひたすら妖しく不思議な世界。
どこか中二的な心を刺激するような魅力に満ちていますね。
映像・音楽・ファッション・雰囲気を楽しんで感じるものであり、メッセージ・ストーリーなんて重要じゃありません・・といった印象を受けます。
両作品鑑賞中の私の主な心の中の様子を一言で表現してみます。
トレスポ
→『うわぁ~・・・』
オレンジ
→『ぐげッ・・・』
なんか分かりませんかこの感じ・・?(笑)
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社会に与えた影響の大きさ
この時計じかけのオレンジは公開時大ヒットしますが、この作品に影響を受けたとされる殺人事件や暴行事件が複数起こってしまいます。
そのためキューブリック監督は家族ともども脅迫を受け、全ての上映を禁止。
再び世に出るようになったのはキューブリック監督が亡くなった後、1999年のことでした。
キューブリック監督的に・・
『映画の影響で殺人事件って・・そんなバカいるの!?』
って感じなんじゃないかな~
そしてキューブリック監督自身、自分の作品が社会に人々に与える影響を見誤っていたのかもしれませんね。
小さく見積もり過ぎていたんではないのかな。
そのくらい影響がある傑作ってことでもあるでしょうね。
そしてキューブリック監督も予想できないようなそんなバカは世界中にいるんです、残念ながら。
『フルメタル・ジャケット』同様、子どもは見ちゃいけない!
(”子ども”とは年齢だけのことではない)ですね。
『好きではないかな、人にすすめはしない』
10代の頃観た時は確かもうちょっと好意的に見ていたかも。
『面白かったよ』なんてケロッと言っちゃってたような。
アラフォーになった今ではとてもではないけどあの頃みたいには観ることはできませんでしたね~
確かに”画になる”というか映像的にはやっぱりすごいと思ったし奇抜なファッションやインテリアもオシャレ!かっこいい!と思う気持ちもわかる・・
ただね、話がひどい!
今回はやめるかどうかギリギリで観ましたよ・・
今どこかよそで人にこの作品の感想を聞かれたら
『好きではないかな、人にすすめはしない』
くらいに無難に答えると思いますね、でも心では傑作と重々分かっている・・そんな作品ですね。
原作からカットされたラストシーン
原作ではラスト、アレックスが完全復活したその後がしっかりと描かれています。
18歳になったアレックスは、
”そろそろちゃんとしなきゃな、身を固めるか、でもきっと自分の子どもも若い頃は暴力的だよ、それは通る道だから・・”
といった感じで今までの自分の行いを『若気の至り』としてラストを迎えます。
映画の終わり方はアレックスが元通りになったところでパツン!と終了していて、
『この人はどうやったってこのまま変わらず生きていくんだろうな』
と見ている側にアレックスの不変性を感じさせ、それが本当にこわいし不気味だし、アレックスのアンチヒーローとしての魅力を倍増させているんじゃないかと。
鑑賞中にアレックスを”かっこいい!”とかうっかり思ってしまった人にとってはこのラストは完璧でしょうね~
”そうでなくちゃ!”みたいなね。
ちなみに原作者のアンソニー・バージェスさん的には映画版の終わり方はなかなか不本意だったようですね。
それでも”アレックスを魅せたかった”
そんなキューブリック監督のこだわりが感じられますね。
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ダースベイダーの中の人が外に出ている
アレックスがかつての仲間から暴行を受け、はからずも逃げ込んだ家がかつて強盗&強姦に入った家だった・・
ここで前回のシーンとの違いがなかなか衝撃的でした、まずなんと言っても奥様の代わりにムッキムキの屈強男が登場するということ。
”ゼーハー”聞こえてくるのは瀕死のアレックスのもの?
と思ったらトレーニングしてる・・ダレ!?
ってなりましたね(笑)
しかもしかもこの人、ダースベーダーの中の人なんだって・・!!
着てても脱いでもインパクトあるんですね・・!(笑)

あとね、このシーンで印象的なのは前回この家の主の作家が着ていたガウンを今回はアレックスが着るってところ。
この柄・・一度見たら忘れられないですね~
そんなこんなの要素がありまして・・・
アレックスが起こした事件により自分は車椅子生活になってしまって、奥さんも強姦事件が死因だと思い込み・・(実際には奥さんの死因は肺炎で、アレックスの事件とは関係ない)
本来ならこの作家のおじいさんが悲惨で不憫で見ていられないような状況なのに、なんとなく雰囲気はちょっとマヌケというか、コメディタッチなんですよね。
そこで『雨に唄えば』歌うなよ~~・・!!ってツッコミますよね。。
作家のおじいさんの演技も同情心を誘うようなものでもないし、あくまでも攻めの雰囲気。
(アレックスがあの事件の犯人と分かる前も利用する気満々だったし)
だからこそ見ていられる、そんなシーンでしたね。
2020年現在も現役!カルト的人気を誇る傑作!
アンダーカバーのコレクションもそうですが、今もこの作品の関連グッズなどは売れ続けています。
めちゃくちゃ種類あります、フィギュアとかアレックスがトルチョックした”例のあのオブジェ”も売っているようですよ・・!
(ここには貼りませんけどね・笑)
まとめ
今回はバイオレンス系映画の金字塔『時計じかけのオレンジ』の感想や小ネタを紹介してきました。
うん、勧めはしません・・でも映画好きなら一度は観てみて!
そんな作品でした。
それではまた次回!

