今回はキューブリック監督作品の『博士の異常な愛情』の感想や小ネタ情報をまとめていきます。
キューブリック監督作品の中ではめずらしいというか革新的というか・・新鮮な雰囲気のブラックコメディに仕上がっています・・!
博士の異常な愛情・基本情報

キューブリック監督最後のモノクロ作品。
1964年公開・イギリス/アメリカ合作 93分
原作はピーター・ジョージ『破滅への二時間』
邦題の正式名称は・・
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』
という長~い副題がついています。
邦題の『博士の異常な愛情』ってなに・・?
鑑賞後にタイトルに対して疑問が。
博士の”異常な愛情”ってなんだ?そんなの出てきたっけ?
・・と思ったら、”ストレンジラヴ博士”という登場人物の名前を無理やり変な感じで訳した、というだけのことだったんですね。
各国の翻訳に関しても厳しいキューブリック監督・・
訳した人物はそのこだわりを逆手にとって印象に残る邦題にしたんでしょうね。
キューブリック監督と戦争映画
SFものとか、シャイニング的なホラーとか・・
私はあまりキューブリック監督に戦争映画のイメージがなかったんですが、前回このブログで感想記事を書いた『フルメタルジャケット』『突撃』そしてこの『博士の異常な愛情』の計3作品の戦争関連の映画を残しています。
あまり監督作品数としては多くないキューブリック監督なので、3作だけでも比率は大きめ。
ちょうど成人する前くらい、10代後半に終戦を迎え、冷戦の時代に映画監督活動時期を過ごしたキューブリック監督にとって戦争は興味深いテーマだったんでしょうね。
戦争映画をとるためか、戦争に関する大量の書籍を読み漁った時期があったそうです。
この『博士の異常な愛情』もそんな時代・社会に対しての風刺がビシバシに効いた作品です!
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とにかく主演のピータ・セラーズがすごい!
この作品でとにかくまず書かなければならないのは、主演のピーターセラーズがすごい!ということ。
なんと1人3役を演じています。
本当は4役だったそうですが、テキサスなまりのコング少佐を演じるのはしぶしぶだったそうで、結局撮影中に負傷。
狭いコックピットでの動きは不可能、ということで別の役者が務めました。
(・・・ほんとに負傷したのかな・・?笑)
私はこの七変化は鑑賞中には全っっく気づかず、のちほど知りました。
え、だって、人種も違うんですよ?
いや~びっくりです。
ひとり3役!人種を超えたカメレオンぶり
写真をこうやって並べてみれば確かにひとりの人物にカツラかぶせたり髭つけたりしているんだな~という感じですが・・

ストレンジラヴ博士

マフリー大統領

マンドレイク大佐
これがですね~
それぞれのキャラの完成度がすごいんです。
声もしゃべり方も表情も、それぞれ出来上がっていて、本当に同じ人物とは思えません。
ピーターセラーズさんはコメディアンでもあったそうなので・・いろんな人物の特徴を掴むのがうまいのかな?
そんな感じのコントとかかなり得意だったんじゃないかな~なんて思いましたよ。
柳原可奈子さんが昔やってたようなやつですね。
特に印象的だったのが、ピーターセラーズ演じる役のひとつ、マフリー大統領がソ連の首相ディミトリと電話で話すシーン。
これがすごくうまい。
ディミトリさんは姿も見えない、声も聞こえないんですが、どんな性格のどんな人物なのか・・
受け答えをするマフリー大統領の様子だけで容易く想像できてしまいます・・(笑)
ほとんどのセリフがアドリブ・・!
さらにすごいのは、このピーターセラーズが演じた役は大半がアドリブだったそうです。
ええ!?あのシーンもあのセリフも??
いや~、すごい。まさに天性の役者ですね。
これはこのピーターセラーズを観るだけでもかなり価値あり!
まだ観ていない人がいたらぜひ観てほしい!
ただのコメディではない!風刺が効いた笑い
この作品はよく名作コメディ○○選!的なものにランクインするんですが、実際には『コメディを観よう!』と思った時には選ばないよな・・
個人的にはそんな印象の作品です。
なぜなら”風刺が効きすぎているから”。これに尽きます。
コメディでもブラックコメディですからね、なかなか皮肉な笑いが満載です。
私はコメディといったらクドカン的な、ひたすら下らなく思わず吹き出しちゃうような平和な笑いが出てくるイメージなので・・
この作品の笑いは”ちょっと社会派的な人”が片方の口角をくいっと上げつつ、または鼻からふっと軽く息を出しながら・・そんな感じの笑いですね。
(そういう人たちへの悪口じゃないですよ)
そんな、”笑えるコメディ”ではないけれどとても面白い・・
おもしろいというのが正解かは分からないけれど、映画として次の展開が気になり、最後までかなり興味深く観ることができました。
傑作!ということには間違いありませんね。
・・あ、でも一か所だけ思わず笑っちゃうようなシーンはありましたね。
ストレンジラヴ博士はドイツから帰化した人で、内心”ヒットラーヒットラー!”なんですよ。
で、興奮すると勝手に右手が動き出してあの敬礼をしそうになってしまう・・それを左手で必死におさえる・・
という文章で書いたらへえ~的な感じですが、この演技がまたおもしろいんですよ。
右手だけ別人格、みたいな(笑)
さすがコメディアンだわ・・
もともとはシリアスな小説だった
”気が触れた軍人の越権行為から世界の終わりが描かれる・・”
というのは原作もこの映画版でも一緒ですが、原作小説『破滅への二時間』はコメディタッチではなくシリアスなお話なんでそうです。
これを深刻モードにせずブラックコメディ風にすることでより風刺が効くというか、ちょっと時代を社会を小バカにするような・・そんなキューブリック監督のセンスを感じますよね。
原作は英語版しかないんですね、残念~
ラストシーンはパイ投げだった

撮影時、この映画のラストはあの会議室でみんなでパイ投げをする・・というコメディ色がなかり強いシーンだったそうです。
が、結局内容にそぐわないということでパイ投げのシーンはカット。
その映像はお蔵入りしてしまったそうです。
確かにこれでラストシーンでパイ投げをはじめたら・・まあ面白いかもしれないけれど、『ただのおバカ映画だな、おもしろいけど』となり、ピリッと風刺が効いたブラックコメディに仕上がらなかったでしょうね。
キューブリック監督は結局風刺を効かせることを最大限に考えたんじゃないかな?
本当、絶妙なさじ加減ですよね。
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まとめ
今回はキューブリック監督『博士の異常な愛情』の感想や小ネタをまとめました。
キューブリック監督の中ではショッキングだったり奇抜な映像はなく、内容もとても分かりやすいし比較的見やすい部類に入るんではないでしょうか。
戦争ものが苦手でも観られますね。
とにかく主演のピーター・セラーズを観てみて!
きっとファンになはず・・!
ではまた次回!
こちらもどうぞ~

