映画『パンク侍、斬られて候』を観ました。
芥川賞作家の町田康さんの原作を読んでハマり、実写映画もある(しかもわりと新しい)ということを知って鑑賞。
”これを実写化とか・・チャレンジャーだな~”
と思いながら観ましたが、観終わってもやはり
”チャレンジャーだな~”と思いました(笑)
今回は映画『パンク侍、斬られて候』の感想や小ネタ情報を紹介していきます!
原作との違いを見つけたりして、なかなか楽しめましたよ。
町田康×石井監督×宮藤官九郎=・・・
原作の町田康さんは伝説のパンクバンドINUのボーカルであり、人気作家でもあります。
リズム感がある独特の文体と抜群のユーモアセンスで芥川賞・谷崎潤一郎賞など受賞しています。
石井岳龍監督は(個人的には前の名前の”石井聰互(そうご)”の方が馴染みがある)
CGを駆使し、派手に!かっこよく!パッッション!!
という印象の作品が多い印象の映画監督です。
ストーリー、展開はまあ二の次(と思っているかは分かりませんが)・・とにかく激しく、情熱ほとばしるような劇的な作風の方ですね。
静かで含ませ系で、細かい小技やテクを使ってオシャレに仕上げるようなイメージが強い邦画界ではなかなかの異端児なんじゃないでしょうか。
神戸芸術工科大学の教授でもあるそうです。
このふたりが組んだ時点である程度ナンセンス要素があるだろうな~と予想されますね。
ふたりともストーリーで魅せるような作風ではありません。良さはそれ以外にある!
そこに万人受け・ギャグセンスばっちりなクドカンが脚本に加わって観やすさ・笑いが追加されたような印象でしょうか。
なかなかおもしろい顔ぶれの制作陣ですね。
茶山の付き人・側近は双子?何者??
腹ふり党の生き残り幹部・茶山を浅野忠信さんが演じていましたね。
そしてその両脇に原作にはいないふたりの付き人が・・
茶山のセリフを全部しゃべっている・・
ものすごいシンクロ!双子!?なにものよ!?
・・と思い調べてみました。

茶山の付き人は小川ゲンと小橋川建
茶山の付き人のひとりめ。

小川ゲンさんは1987年生まれ。埼玉出身。
俳優・声優・ナレーターとして活躍しています。

付き人二人目。小橋川建(たつる)さんは1991年生まれ。
沖縄出身の俳優です。
・・ということで、茶山の付き人は双子ではなく別々で活動している俳優のお二人でした。
でもこのふたりものすごーく息ぴったりだったので、相当練習をしたんじゃないかな~
茶山のセリフは全部アドリブ!
そもそもなぜ、原作にはない茶山に付き人がついたのか?
これは石井監督より出演のオファーを受けた浅野忠信さんが、当初は”主役じゃないなら嫌だ、茶山は嫌だ”ということで断りかけ・・
結局”茶山は喋らない方がいい”という浅野さんからの提案(妥協案?)がそれはいいね!と通り、じゃあそれで・・ということで決定したそうです。
なのであの付き人は茶山役が浅野さんだったからこそ生まれたキャラなわけですね。
でもかなりいい感じでしたよね~付き人。茶山も元々謎な人物ですし。
でもね・・
これいろんなところで突っ込まれてますけど・・
茶山、普通にしゃべってんですよ!(笑)
セリフなしを提案した張本人・茶山役の浅野さんは終始ブツブツとなんか言ってます。これ全部アドリブらしいです。
ってこれおもしろすぎませんか・・?(笑)
役名無視で『剛くん~』とか言っちゃってるらしいし・・(私は聞き取れなかったけど)
いや~昔から浅野さんはエキセントリックな印象の役が似合うと思っていたけど、素?のご本人もなかなか面白い?方なんですね~

アドリブでドロップキックがかませる空気感
茶山のセリフがアドリブだったということで・・
ほかにもアドリブのシーンがあったようです。
(これも茶山がらみですね)
掛(綾野剛)と孫兵衛(染谷将太)がはじめて茶山に会いに行くシーン。
なんか雰囲気がわちゃっとしている?と思ったらこのシーン全部アドリブなんだそうです。
いや~、すごい。
何がすごいってあなた・・
アドリブでドロップキック出せますか?
って話ですよ。
よほど信頼関係があってテンションが上がるような撮影の雰囲気じゃないとできないですよね~
最後の展開がわけ分かんないけど・・
原作を読めば分かりますか?
クライマックスの戦い、わけ分かりませんよね。
猿が天に昇って行ったり、茶山の最後の白い巨大な壁はトイレですか・・??
腹ふりにはまった人々は消滅?していくし・・
これはですね、実は原作読んでもほとんど意味は分かりません!
(謎は1割くらいは解消するかもしれないけど・・)
そういうものなのです。考察とかするのも無意味です。
(掛が大浦主膳を斬るのは原作になく、そこはちょっと急ぎ足すぎるといいますか、多少のやっつけ感がありましたが・・笑
原作では主要人物の最後はもっと丁寧に描かれています。
そして映画を観たらきっとみんなが思った何が”パンク”なのか・・原作を読めばちゃんと分かります)
ただこの作品はストーリー重視ではないんですよ。
”そんなわけ分らん話は駄作だ”としてしまっては非常にもったいないです。
先ほどちょっと書きましたが、原作の町田康さんの文章は独特なリズム感があり、ユーモアセンスも素晴らしいのです。
クライマックスの展開こそSFなのか宗教の力なのか妄想なのか読者はちょっと置いてけぼりを食らいますが、町田さんの作品の主人公の人格は常識的でまともだし(脇は変人だらけですが・笑)とても共感できるし読みやすい。そしてとてもおもしろくて笑えます。
それからこのパンク侍について言えば現代の時代風刺が絶妙にきいている・・!
(時代劇なのに・・!笑)
映画では省かれていますが、孫兵衛が真鍋(村上淳)に殺し屋の依頼をしに行くシーンなんてもう、『主体性がなくなんとな~く”してもらって生きている”ような若者』をずばずば斬っていてめちゃくちゃおもしろいです。
パンク作家の文学作品ってどんなかな、と思っていたけど想像以上に常識的な感覚をもっている、世間をよく知っている作家さんなんだな、と感じました。
ってまじめな印象になってしまったけど、ギャグ・ふざけてる感じも本当面白いです(笑)
ということで原作がめちゃくちゃおすすめ!
原作ではパエリア作ったり焼肉焼いたりします(時代劇なのに・笑)
町田さんは風刺も上手いということが証明された作品。
ぜひ独特のリズム感ある文章をご堪能下さい~
町田さんも映画に出演されていましたね。
冒頭にさっそく斬られるろんの父親役です。
おわりに
最後に・・
みんな役に合ってたけどろんだけはミスキャスだったな~
この作品の魅力のひとつである新興宗教『腹ふり党』の存在。
胡散臭くてあほらしい、でも人々を洗脳していくあやしい団体の幹部が全然腹を振ってないってダメでしょ~
女優さんでもできる人他にいたと思いますけどね~、二階堂ふみちゃんなんて適役じゃないかと。
そんなちょっとした文句で終わりますが(笑)
パンク侍、斬られて候・・
文章・映像それぞれのよさを楽しみました!
映画の展開に納得いかなかった人も原作読んでみてっ!