湯浅政明監督の「夜明け告げるルーのうた」を観ました。
”人魚が音楽好きで音楽に寄ってくる”という設定だけあり、主題歌・挿入歌が印象的な作品でした。
この記事では取扱い楽曲、父テルオのテープの収録曲の紹介や感想をつづります。
一部ネタバレがありますのでご注意ください。

夜明け告げるルーのうた
日本/2017 113分
監督:湯浅政明
脚本:吉田玲子・湯浅政明
キャスト:谷花音・下田翔大・篠原信一・寿美菜子・斉藤壮馬・鈴村健一・柄本明
主題歌:斉藤和義
夜明け告げるルーのうた
登場した楽曲
ではさっそく劇中で流れていた挿入曲から紹介します。
挿入歌
かわいい唇
作詞:湯浅政明/作曲・編曲:桜井真一
♪「おまえのかわいい唇と~
おれの乾いた唇が~ぁ
重なる度に~・・」
このかわいい曲、湯浅監督作詞のオリジナル曲だったのか!
カイのおじいちゃんがその昔ウクレレ弾きながら歌ってたやつです。
ん?あれを歌ったことで曲に寄ってきた人魚により母は助けられたのか!?
・・と書いている今気づいた(遅)
Dance Girl踊り子
作詞:湯浅政明/作曲・編曲:桜井真一
こちらもオリジナルソング。
人魚ランドのステージで遊歩が歌っていたポップな曲ですね。
fight/YUI
カイがルーとパパを助けに行く際に流れる曲です。
父のテープの楽曲
昔バンドをやっていたカイの父、テルオの当時お気に入りの楽曲を集めたと思われるテープ。
作中で曲は流れなかったもののなかなか気になるラインナップだったので紹介していきます。
全10曲です。
A面
①歌うたいのバラッド/斉藤和義/1997年
この作品の主題歌です。
クライマックスで歌われていました。
②スローバラード/RCサクセション/1976年
伝説的人物、忌野清志郎さん率いるバンドです。
③OKコンピューター/レディオヘッド/1997年
“OKコンピューター”はアルバム名です。
こちらは収録曲&代表曲の”LET DOWN”。
④君が僕を知ってる/RCサクセション/1986年
RCサクセション2曲目。
⑤自由/RCサクセション/1984年
RCサクセション3曲目。
B面
⑥トランジスタラジオ/RCサクセション/1980年
RCサクセション4曲目。
⑦愛のために/奥田民生/1994年
奥田民生さんも伝説になりつつある存在ですね~
⑧日曜日よりの使者/ザ・ハイロウズ/1995年(アルバム収録)
シングルカットされたのは2004年なんですね。
もともとシングルなのかと思っていました。
本家の視聴音源がないのでカバーで。
いろんな人にカバーされてますね。
⑨人の息子/奥田民生/1995年
奥田民生さん2曲目。
⑩人にやさしく/ザ・ブルーハーツ/1987年
やはり本家の視聴がないのでこちらもカバーで。
ハイロウズもブルーハーツも、サブスク解禁されていないから視聴もない?ようです。
解禁となったら大きく取り上げられるでしょうね。
こうして並べると年代にバラつきがありますが、カイの父親世代のバンドやっていた人がチョイスしそうな選曲です。
1曲だけ洋楽が入っているあたりリアルですね~。
湯浅監督もバンドやってたのかな?
にしてもA面B面って懐かしすぎる・・!!
夜明け告げるルーのうた
感想
ルーかわいかったな~・・
見たことある感じの絵だと思ったら、キャラデザ原案は漫画家のねむようこさんだったんですね。
ということで、夜明け告げるルーのうたの感想なんか書いてみましょう。
感動シーンをつらつらあげてみます。
感動シーン①クライマックス「歌うたいのバラッド」
ぐっときたシーン・・
やはりいちばんはクライマックスのカイが歌う「歌うたいのバラッド」のシーンでしょう。
両親の離婚も背景にありどこか影を抱え鬱屈した青春の日々を送るカイが、ルーとの出会いで徐々に変わっていきラストシーンで想いを伝える・・
感動的なシーンです。
誰かが何かのきっかけにより「変化」「成長」していく姿を描く物語にどうにもこうにも心惹かれてしまう私。
カイが変わっていく様子を”ニヤニヤ””ぐふぐふ”、たまにへこみながらも存分に堪能させてもらいました。
ルーとの夜のお散歩シーンとか本当たまらん・・!
私は本家の斉藤和義さんの歌うたいのバラッドが大好きなんですが、不器用なカイが歌う気持ちがこもったこのバージョンもめちゃくちゃよかった。
”音楽の力”を感じずにはいられない素晴らしいラストシーンでした。
「心から好きなものを口に出して”好き”と言えているか」
というテーマのこの映画にぴったりの歌詞です。
曲の使い方も非常に効果的で、
視聴者の「もうちょっとその曲ちゃんと聞きたいんですけど」
をひっぱってひっぱってひっぱって・・
”やっとキター!!”
・・というあの感覚を名DJは大切にするそうですが、この「夜明け告げるルーのうた」でもその効果がばっちり発揮されていました。
感動シーン②ルーのパパがキレる
捕らえられたルーのピンチを感じとり、体を燃やしながら突進するルーのパパの姿に心打たれました。
ルーのパパ、柔道家の篠原信一さんが声をあてていたんですね、気づかなかった。
篠原さんもプライベートでは4児の父だそうできっと感情が込めやすかったんではないでしょうか。
父は強し!
感動シーン③カイのじいちゃんの母の真相
カイのおじいちゃんが人魚嫌いになった理由は、尼さんだった母が人魚により命を奪われたから・・
と思っていましたがそれは誤解でした。
ラストのシーンではその誤解がとけていくわけですが・・・これもグッときました~
母とじいちゃんの笑顔がいい!
母もまた強し!
感動シーン④タコばあさんの恋人
愛する人を人魚に奪われた「タコばあさん」のエピソードもいいですね。
どうやら人間は”人魚になった時点での容姿”が保たれるようで、タコばあさんの恋人は若い姿のまま。
若い姿のままのイケメン恋人が年老いたタコばあさんを受け入れる
・・ってところがポイントです。
ステキな恋人じゃないですか。タコばあさん、よかったね!
愛は強し!
感動シーン⑤人魚は人間を助け、人間は人魚を助ける
お陰岩の祟りで水没する日無町の人々を人魚が助け、日差しをよけるために傘を広げる漁師たち・・
人魚と人間の長年のわだかまりが解けました。
日無町は”フカヒレと傘と人魚のまち”をウリとしていて、カイのおじいちゃんも傘職人。
傘を作る姿が度々描かれていましたが、これがラストに効いてくるわけですね!
色とりどりの傘が綺麗でした。
日無町の伝承とか人魚伝説とか・・たまらん!
日無町は「踊木県」にあるとされる架空の町。
その名の通り大きな「お陰岩」で日光がさえぎられる地形です。
日無町には人魚伝説があり”人魚は人を襲って食べる”とされていて、太陽の光で燃えてしまうという人魚除けのため、町の人は太陽に似せた白く塗ったウニを軒下に吊るして魔除けとしています。
・・架空の町であり作られた設定と分かっていても、私はそういった各地に残されている古い言い伝えや伝承に目がありません。
古い時代から長きにわたり人々から信じられ慣習となっているもの・・興味がわきませんか?
”人魚を祀った石碑”とか、”海で亡くなった人の慰霊である「灯篭祭」”とか・・
そんなのを聞くとどうしても心躍ってしまいます。
カイが読み上げる人魚伝説が載っている書籍は「日無町奇談」。
何ソレ、私も読んでみたい!
(もちろん実在しませぬ)
ちなみにカイが住む家は京都府伊根町の舟屋がモデルになっているそう。
京都は日本一と言っていいほどたくさんの伝承がありますからね、私にとってとても興味深い地です。
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おわりに
「夜明け告げるルーのうた」はポップでかわいい、名曲が効いている傑作ファンタジー作品でした!
また、父のテープの曲は歌うたいのバラッド以外は作中で流れませんが、若い頃バンドで成功することを夢見て結局田舎に戻り地元で働く・・
父の立場からの視点で観るとまた別の楽しみ方ができる作品でもあります。
ある程度年齢がいった大人がこの作品を観たら意識せずともそちらの方が心に残るかも。
そんな視点からも、元ダンサーの活〆講師のあの人もいいキャラだった~!
↑「夜明け告げるルーのうた」の原型作品とされる「なんちゃってバンパイヤン」は「キックハート」の特典ディスクに収録されています。
↑わんぎょ!
ぬいぐるみ発見!!
かわいかったし活躍してましたよね。
