先日『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を鑑賞してきたのでその感想や前作との違いなんかを書いてみます。

感想
ネタバレを一部含みますのでご注意ください!
追加されただけなはずなのに新鮮!『新作』だった!
2016年に公開された『この世界の片隅に』に38分間の新しいシーンを加えたバージョンということで168分の長尺作品。
いや~油断しました。前作のオリジナルに新しいシーンが追加って、いわゆる完全版とかディレクターズカット版みたいなものだろな〜、と。
そういう類のものってファンサービスというか、”あの作品プラスα”的に楽しむものだと思っていました。
が、この作品の場合、新しいシーンが加わったことにより元々あるシーンが違う印象に見えてくるという不思議な現象が起こってるんですよ。
私『えっ・・そうなの!?
はあ〜そうかぁ・・
それでこういうわけなんだー、うわぁぁぁ・・
くぅぅ~・・すずー!!』
といった感じで(笑)
心動かされまくりました、前作とは別の部分で。
やたら長い映画は苦手だししかも内容ほとんど知っていて168分って・・
と、ちょっと不安に思っていたけどこの不思議現象のおかげで終始新鮮な気持ちで観ることができました。
片渕監督のおっしゃる通り、これは続編でも完全版でもなく『新作』となって生まれ変わっているわけですね。
そしてこれ、凄いのは前作も前作で完璧だったこと。
確かに言われてみたら”あれってなんだったのかな?”と思うシーンはあったけど、例え解釈が違っていたとしても観る人が自然に補完できるように工夫されていたと思います。物足りなさは全く感じなかったな。
元々の作品も完璧だし、今作も完璧。
私はどちらもとても良かったんですが、もし子供に見せるとしたら前作ですね。
長いと飽きちゃうってこともあるし、遊郭とかもふわっと幻想的に描かれていて。
前作は子供でも誰でも観やすいように意識して作られている気がしますね。
内容は知っているのにやっぱり悲しくなる・・観たいのに観たくない!
とても良いんですこの作品。でも今回もやっぱり悲しく辛かった。
お話は知っているのに前回同様しばらく引きずりました。
レイトショーで観たのち、家に着いたら我が子の寝顔が愛しすぎて半泣きで寝顔にすりすりして足蹴にされる・・幸せを感じました(笑)
観たいのに観たくない(でも観なきゃいけない)映画ですね。
『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
どちらも名作中の名作。大傑作。
『火垂るの墓』と合わせて後世に受け継がれるべき作品ですね。
『この世界の片隅に』+(さらにいくつもの)好きなシーンは・・
個人的に好きなシーンをあげてみたいと思います。
◆海のうさぎの絵を描くシーン
この絵いいですよね、そりゃ入選しちゃいますよ~
◆はるみちゃんが硯と筆を何の目的で借りようとしているのか判明したシーン
すずのハゲを隠してあげたかったんですね。
笑っちゃいました、ごめんねすずさん。
◆周作がすずにノートを届けさせる・・と思ったらデート
しみじみかみしめますね~いいなぁ・・(笑)
この前のシーンでケイコさんが早口ですずに説教するのもおもしろいですよね。
『恥をかくのはしゅうさくなんだからなんちゃら・・』ふたりのキャラがよく出ていました。
◆前にも『この世界の片隅に』の記事で書きましたが、周作とすずの夫婦喧嘩のシーンが好きです。
ヤキモチをやく周作からのほげた靴下の話とか、ふたりともかわいすぎかよ~ってなりますよね。
足が入らないことになった靴下ってどんなでしょ?(笑)
◆冒頭のもじゃもじゃ人さらいがワニのお嫁さんを貰ったすずの鬼いちゃんだったことが判明したシーン
ラストシーンですね。ここだけ急にファンタジー。でもとても良かった~
お兄ちゃん、恋のキューピットだったんじゃないですか~、怖いだけじゃなかったのね。

『この世界の片隅に』とどこが違ったか
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』で追加されたシーンや違いを無粋にもあげていこうと思います、ええそういうブログなんですここは(笑)
事前情報ではリンのエピソードが追加された、とありましたがリン以外でもちょこちょこ追加シーンはありました。
・水原の乱暴エピソード
序盤に水原くんがちゃぶ台みたいに机をひっくり返すシーンが出てきます。
『水原を見たら逃げろ』的な女子の決まり事。
これがすずの鬼ぃちゃん(お兄ちゃん)の男子からの『浦野の兄貴を見たら逃げろ』と対になっているんですね〜
で、ふたりになった時に鉛筆をくれると。
そしたらあら不思議。カゴに置かれたお花まで印象が変わって見えました。
・女性が竹やりを練習する
呉の女性たちが竹やりを持つ訓練のシーンが追加されていました。
これで下関に向かおうとする前にケイコにすずが言ったいざとなったら竹やりが何のことか分かりました。
・リンが捨てられ遊郭に来た経緯
すずが子供の頃、おばあちゃんの家で会ったスイカを食べる座敷童子がリンだったことが分かりやすくなっていました。
この時のリンのセリフ
『捨てられた子でもこの世界に居場所はそうなくならない』
これがあのはるみちゃんとの時限爆弾のシーンで効いてきますね〜
戦争の不条理さが強調されています。
・すずが妊娠したと思ったらしていなかったエピソード
前回もご飯2人分→やっぱり1人分、となっていましたが、リンとの会話で詳しく説明されていました。
嫁いで後継を産むということに重きを置く考えのすずと型にはまらない遊女リンが対象的でした。
・字が苦手なリンが持つネームカードと周作のノートの切れ端
・誰のもの?美しいお茶碗
・小林のおばちゃんのイヤミ(最初すずは気づいてないけども)
・周作を拒むすず
このあたりが最大の追加エピソードですね。
リンと周作の過去にすずが気づきます。
これがあっての水原が北條家を訪れた時のすずの感情爆発につながるわけですね。
前作から見方が一番変わったシーンでもありました。
・お花見で再会
リンと周作の再会。気になる周作の反応は・・
完全に『過去』でしたね、リンも周作も。
・肺炎で亡くなる遊郭のテル
テルのために雪に南の島の絵を描いてあげるすずが印象的でした。
本来は武器である竹やりで絵を描いているというのがポイントですね。
すずが周作を見送る時につける口紅、空襲で割れてしまった口紅は元々テルのものだったんですね。
ううぅぅぁーー
特に印象的だったのはそんな感じです。
細かいところだと、
・小松菜のタネをまく
・空襲後の焼けた遊郭を見に行けと周作がすずを促す
・台風被害
・義父(円太郎)の仕事場の様子
・日傘をさす知多さん
もありました。
日傘シーンはよく分からなかったのであとで調べてみました。
元看護士だった知多さんは原爆が落ちた翌日に広島に救護隊として出向き、その時に内部被爆してしまったようです。
そして日が眩しい、と11月なのに日傘をさしている・・そんな描写なんですね。
ちなみに2019年夏にNHKで放送(地上波初放送)していたものは口紅で描かれたリンの生い立ちなどのエンディング映像が省かれていました。
この映像は(さらにいくつもの)の最後で見たら全部腑に落ちるというかしっくりきますね。
いろいろ情報が追加された上で見ていたら・・
周作~きっとマジメで遊び知らず故の恋心だったんだろうな~なんて思いを巡らせましたとさ。
まあ、全てを知りたければ原作を読もう!ですね。
上中下の全3巻です。

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おわりに
「この世界の片隅に」は元々バージョンも、(さらにいくつもの)バージョンもどちらも素晴らしい作品です。
見る見るせようっと・・・
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