かわいらしい絵柄の3頭身の兵士たち、でも描かれるのは残酷な戦争の現場・・
ヤングアニマルで掲載中の『ペリリュー楽園のゲルニカ』を読みました。
先日パラオの記事を書いていた時に知ったこの作品、読み終えてから数日たちますが、なかなかずっしり心に余韻が残っております。
今日はマンガ・ペリリュー楽園のゲルニカの作品&登場人物紹介と見どころ案内、感想など書いていきます!
一部ネタバレがありますのでご注意ください。
※この記事は8巻既刊の時点で書いたものです。
9巻~最終巻までの感想、アニメ情報は下部に追記しています。
ペリリュー楽園のゲルニカとは
2016年~ヤングアニマルにて連載スタート。
2021年7月に最終巻である11巻が発売されました。
1944年・第二次世界大戦中のパラオ諸島ペリリュー島での日本軍のリアルな戦場の現場を史実をもとに描いた作品です。
第46回日本漫画家協会賞の優秀賞を受賞。
「やわらかな筆致で、戦争を恐ろしく、かつマンガとして”おもしろく”描いた」と評価されました。
作者は武田一義さん
作者の武田一義さんはご自身の精巣腫瘍の闘病体験を描いた『さよならタマちゃん』で漫画家デビュー。
このかわいらしい絵は読み手の病気のしんどさや辛さを緩和するために作り出された絵柄、とのこと。
ペリリュー楽園のゲルニカでも視覚的な衝撃はおさえつつ、起こっている事象の恐怖はしっかり感じられるように、と前作と同じ絵柄で描かれています。

確かに”ペリリュー楽園のゲルニカ”は内容がすごくて・・
この絵じゃなかったら読めないかも。
でも怖さはめちゃくちゃ伝わってくる・・
兵士が三頭身なのはこんな理由があったんだね。
秀逸な『楽園のゲルニカ』というサブタイトル


パラオのペリリュー島はサンゴ礁に囲まれた美しい海と豊かな自然に恵まれたまさに『楽園』。

言わずと知れた絵画の世界的傑作・スペイン内戦を描いたピカソのゲルニカ。
『楽園のゲルニカ』は楽園で起こった戦争を的確にあらわしたサブタイトルですよね。
また、漫画の絵柄と内容、楽園とゲルニカ・・
ふたつのギャップを潜在させたような秀逸なタイトルです。
おもしろさと凄惨さの無限ループ
以前ゆうきまさみさんがこのペリリュー楽園のゲルニカを
”『面白い!』というにはあまりにも凄惨、『凄惨!』と慄くにはあまりにも面白い』”
という文言で紹介されていたんですが、実際読んでみたらこの言葉に共感しまくり。
めちゃくちゃ面白い!
でも”面白いよこれ!”と言うにはあまりにも凄惨すぎる・・
でも面白い・・
この漫画を紹介する言葉を考えた時、そんな無限ループに陥れます。
私はちょっと飽きっぽくて、漫画を2~3冊立て続けに読むと集中が切れてしまうんですが、これは既刊の8冊を数時間で一気読みしました。
ここまで続きが気になる漫画、一気読みできる漫画は久々でした。
ストーリーのおもしろさはもちろんですが、絵柄やコマの大きさ、読みやすさも高評価を得ているポイントでしょうね。
8冊一気読み!
漫画としてはめちゃくちゃ面白い!ってことだよね
でもものすごく悲惨、でも・・・・・・・(∞)
ここからは『ペリリュー楽園のゲルニカ』の人物紹介・見どころ・魅力を紹介していきます!
追記
9巻・10巻・11巻を読み終えて・・
なるべくネタバレせずの感想記事を追記しています。
スポンサードサーチ
思わず感情移入してしまう登場人物たち
戦争の現場を描いたもの、そしてこの絵柄・・
まさかまさか、ここまで登場人物に思い入れるとは・・
予想外。いい意味で裏切られた感じです。
”こういう人いるよね”という普通っぽい現実味もありつつ、それぞれ個性があってキャラがたっています。
既刊8巻までの印象で人物紹介をします。
”普通”感覚の主人公・田丸

主人公の田丸は漫画家志望の一等兵。
漫画・・ストーリーの創作が得意と見込まれ分隊の功績係に任命される。
戦地に赴くにはのんびり屋さんでちょっと気弱な性格。
でもやる時はやります・・!
主人公が普通っぽい感覚だからこそ読者は共感でき、より現場の恐ろしさが伝わってくるんですよね。
きっと吉敷くんは不動の人気ナンバー1キャラ

強く優しく、デキる男・吉敷(よしき)くん。準主役。
田丸と同期だが優秀なため上等兵に抜擢される。
”デキる”なんて言葉は安っぽい・・
彼の魅力を的確に表現できる言葉は簡単には見つかりません。
読者一同、心で”吉敷コール”を送っている。はず。
めちゃくちゃいい味だしてる小杉伍長

田丸・吉敷と同じ分隊の小杉伍長。
常に平静さを保ち、抜け目がなくずる賢い。とんずらが得意技。
”お国のために”のこの時代でも、きっとこんな人はいたよね。
今後の展開、小杉の動き次第では”いい味だしてる”なんて言えなくなるかも・・?
そんな謎めいた怖さを秘めている。
彼の存在は間違いなくこの作品をより面白くしています。
泉くんに泣かされました

田丸・吉敷と同期の泉くん。
大人しく優しそうだが何か闇を抱えていそうな雰囲気・・
島田少尉を心から慕い、少尉もまた格別な信頼を寄せている。
泉くんには泣かされます。ハンカチを準備して読んでね。
類稀なるカリスマ性をもつ島田少尉

第二小隊の隊長、島田少尉。
戦死した仲間に泣きながら手を合わせ偲ぶ、情に厚い若き少尉。
統率力抜群、部下はもちろん他分隊の隊員たちからも熱い支持を受けつつ生き残った日本兵を束ねる。
完璧に見えた少尉だが、軍人としての従順さが不穏な空気を呼ぶ・・・かもしれない・・
あまりに残酷な戦場のリアルを知ることができる

史実をもとに作られたフィクション、ペリリュー楽園のゲルニカ。
戦場のリアル・・
それはちょっとここでは書けないよってくらい、思わず目を疑いたくなるようなシーンが満載です。
体力気力がじゅうぶんな時に読むことをおすすめします。

そんな”怖さ”も描かれています
やっぱりこの絵柄だから読める内容だよな・・
凄惨な戦場・つかの間の平穏

ドンパチしている戦場だけでなく、壕の中での生活や人間関係・友情もしっかりと描かれることで読み手の精神的ダメージが少しだけ緩和されている気がします。
これも絵柄同様、読み続けるためのポイントなのかもしれませんね。
スポンサードサーチ
物語は”終戦”で終わらない
日本軍パラオ守備隊本部は玉砕、日本では広島と長崎に原爆が投下され、終戦の日を迎える・・
この漫画は戦争真っ只中の戦いが描かれるだけでなく、終戦後の現地に残された軍人たちのその後、それぞれの心理描写も見どころのひとつでもあります。
パラオ守備隊本部没落が描かれるのは第3巻
ペリリュー島での戦いはそれまでの日本軍の特攻的な戦い方、万歳突撃や玉砕が禁じられていました。
『持久戦』という新しい日本軍の戦い方は、現地の軍人たちを長きにわたり苦しめることになります。
ペリリュー日本軍の本部の玉砕。
司令部への最後の電報『サクラサクラサクラ・・』
パラオ守備本部没落が描かれるのはなんと第3巻。
早い段階で事実上の戦いは終わります。

大半が黒で描かれているのが印象的
戦争が終わってからのできごともまだまだ語られるべきことがあるんですよね。
私が知る限り、終戦後の戦地に残された軍人の様子をここまで事細かく描いた漫画はありません。
戦争は終わったのか?終わっていないのか?
それぞれの心理描写が丁寧に描かれ、今後の展開がますます気になるところです!
無料試し読みあり!↑
9巻10巻を読み終えて・・
ここから追記でございます~
ペリリュー楽園のゲルニカ、この記事をはじめて書いてからすでに続きの2冊が発売されました。
読んでほしいのであまりネタバレは書きたくありませんが・・
とりあえず・・
島田少尉の・・・・・
バカーーー!!!!
と、戦争ものなどでなくただのフィクション作品なら心おきなく叫べるんですけどね・・
違う、悪いのは少尉じゃないんだ・・
でも田丸も吉敷くんも悪くないんだよ~
そして最初の人物紹介で書いた通り、やっぱり小杉伍長はいい味出してますよね~
漫画評価的な視点だけで見たら・・何か賞もらえるくらいほんっとにいいキャラだと思う!秀逸!
私的最優秀脇役キャラ賞を差し上げたい・・!!
なんだそれ・・
無名ブロガーに賞もらっても名誉じゃないな(笑)
すみません、そのくらい個人的に小杉伍長に思い入れてしまったのです・・
さてさて、今作は日本軍パラオ本部の没落が第3巻で描かれもうそろそろ終盤か!?と思いきやあれよあれよと10巻まで出ました。
この作品のレビューで
『終わり損ねた』だとか『引き伸ばしすぎ』的なものを見かけましたが私としては全くそうは思いません。
この記事でも書いていますが、この漫画は戦争が終わってからのあれこれも非常に興味深く、どの巻も山場がありどの巻も重要です。
そしてどの巻も泣けます・・
9巻・10巻も泣きましたよーー
でもさすがに10巻で”ハラハラするような戦い”は終わったかな・・?
次巻11巻が最終巻になる予定だ、と10巻の巻末に書かれていましたね。
物語はいよいよ大詰め!
個人的に気になるのは”島田少尉が何を考えているのか”ってことだな~
そこらへん詰めて描かれるのだろうか・・
田丸と吉敷くんは”再会”できるのか・・
最終巻、最後で淋しい気持ちもありちょっとほっとする気持ちもあり(お話的に悲しいから・・という意味で)
2021年夏の発売を楽しみにしています!
最後に『最終と言って11巻で終わらなかったりして・・』みたいなこと書かれていましたが・・それならそれで私は大歓迎であります~(笑)
最終巻・11巻を読みました!
11巻でちゃんと終わりましたね。
もうめちゃくちゃ泣きながらの読了でした・・!
感想を書くのに一呼吸置きたいので、後日追記します。
とりあえず一言だけ言うとしたら・・
田丸家と吉敷家が結ばれたことに非常に心を打たれたっ・・・!!
くううぅ~~
こりゃ本当に傑作だ・・!
田丸と吉敷くんの”再会”
さてさて・・
ここから一呼吸おいての追記です。
11巻は小タイトルが全て「鎮魂」でした。
時代としてはペリリュー島からの帰国~現代までが主に描かれています。
冒頭から登場する人物・・”吉敷くん現代版”は誰!??
ってなりましたよね。
「吉敷くん子供いたっけ??
いや、結婚してないはずだしやっぱり生きていたのか!?」
・・と思ったら、まさかの田丸の孫でした。
(第一巻の最初に登場した彼と同一人物)
あれから田丸は吉敷くんの妹と結婚したんですね。
ってことは田丸と吉敷くんは兄弟になったわけです。
あああ、なんて感慨深いのか。
ふたりはやっと再会できたようですね。
ワニと登場したあたり、やっぱり吉敷くんのその後は・・・・
と予感させるラストでした。
島田少尉の計り知れぬ思い
島田少尉・・!
やっぱり強い意思があったんですね・・
「幸福になるためにここに留まった訳ではない」
責任を取るため?鎮魂のため?けじめ?
少尉の思いは計り知れないものがありますが、残りの人生の全てを捧げて島に残ったことは間違いありません。
毎日毎日、泉くんや吉敷くん、部下たちを想って一生を終えたんでしょうね・・
戦争の全てを描くことはできない
片倉兵長の戦争漫画の取材を断ったセリフが印象的でした。
「話を聞けば体験していなくても描けるとお考えですか?」
以前、”どんな小説も漫画も映画も絵画も、戦争というものは描ききれない”
と聞いたことがあります。
それほど戦争というものは恐ろしく悲惨で惨たらしいできごとということです。
この片倉兵長の言動は、戦争漫画に挑んだ作者のメッセージ&戦争という重厚なテーマに対する畏怖の念のようなものを感じました。
それでもなお、この「ペリリュー楽園のゲルニカ」のように多くの人が手に取りやすく、読みやすく描かれた漫画は非常に有意義で貴重な存在であることは間違いないでしょう。
やはり読み継がれるべき傑作!
(決して”ネタバレ”だけ読んで終了させるような作品ではない・・!)
完結の11巻発売中!
アニメ化の発表もされましたね~!!
アレやあれをアニメで・・!?
表現が難しそうだ~
いつどこで放送なのか、製作はどこなのか・・まだ詳細は明かされていません。
アニメの情報が入り次第こちらに追記していきます。
うーーん、(オタクとしては)声優が誰か気になる!
無料試し読みあり。
まんが王国でもペリリュー楽園のゲルニカは読めます。
まったね~♪
